胸の香り
宮本 輝

定価: ¥ 420
販売価格: ¥ 420
人気ランキング: 50707位
おすすめ度: 
発売日: 1999-07
発売元: 文芸春秋
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余韻の残る、大人の味わい
宮本輝らしい、香り立つ作品集。
こたえを出すことの難しい様々な恋愛が描かれている。不倫と妊娠、出生の秘密・・・人生の影の部分を仄かに照らす、こころの物語。
『月に浮かぶ』では、名月の夜に洋上で不倫相手の深刻な告白をうけて“私”がつぶやく。「僕には、海に映っている月のほうが本物に見えるよ」・・・。
善悪では割り切れない、男と女の恋愛・性愛のどうしようもない部分が描かれていて、余韻の残る短編集だ。
濃縮された短編集
この『胸の香り』には、濃密な七つの短編が収められている。
「あとがき」によれば、「二、三の作品を除いて、ほとんどは四百字詰原稿用紙で三十枚あるかないか」の小説であるけれども、いずれも味わい深く、余韻の残る作品ばかりである。
これらの小説の中で、私個人としては「道に舞う」が好きだ。「好き」というよりむしろ、この作品を読んでいて子どもの頃の切ない記憶が蘇ってしまった。生きることの辛さ、切なさ…。普段は心の奥底に眠っているそういったものに対する感情が、一気に噴き出たのであろうか。さらにこの作品は、不思議と高史明さんの『生きることの意味』をも彷彿とさせた。
何はともあれ、七編すべて実に巧みなプロットと筆遣いである。
濃厚です。
本は薄いですが、中身は濃厚な短編集。特に『舟を焼く』は少ないページによくぞと、ため息が出るぐらい読み応え充分です。旅館を営む若い夫婦と焼かれる舟のエピソードを聞くにつれ互いに自分の心を顧み、やがて気持ちの整理をつけます。舟に運命を重ね合わせる様が絶妙です。
